君に捧げる物語
初めて会ったとき、君は僕にこう言った。

『私をあなたが仕えるにふさわしい主にしてください』

そう言って僕に頭を下げた君の姿が忘れられない。

『俺は、かなりスパルタですよ?』

こんな閑職、適当に済ますつもりだった僕。

適当に答えたはずなのに。

『望むところです!よろしくお願いします』

そんな僕を受け止め、君は笑った。

賢い君が、分からないわけがなかっただろう。

ココに来る家臣は誰一人君に好意を持っていないという事実も。

僕にやる気が全くなかったことも。

全部知っていたはずなのに。

『先生、次は何を教えてくれますか?』

君はどんな時でも笑顔を絶やさなかった。

嫌な顔一つせず、

己の運命をまっすぐに受け止め、

決して誰かを呪ったりしない。

凛として立つその姿は、

なんと美しいのだろう?

僕は、自分が恥ずかしいと思った。

君は自分の中に燻っていた情熱を、僕に思い出させてくれた。

そして誓った。

僕は国ではなく、君に僕の全てを捧げようと。
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