ブルースプリングの心臓
「な……なんで? シンも、地元の大学行くんじゃないの?」



突然の彼の告白に動揺しながら、あたしはしどろもどろ、そう訊ねる。

──シンとは、彼が中1のとき転校してきてから、高3の今までずっと、一緒に過ごしてきた。

同じマンションで、中学のクラスも志望した高校も一緒で。

高2、高3と初めてクラスが離れたけど、それでもこうやって、一緒に登下校するのは変わらなかった。

中学の頃、同級生の中にはそんなあたしたちを冷やかしてくるような男子もいたけれど……シンの『だから何?』とでもいうようなあまりにも堂々とした態度に、みんな次第に、からかう気も削がれていったものだ。


ただの友達でも、家族でも、恋人でもない。

そんな、今の心地よい関係が、これからもずっと続いていくんだと思っていたのに──……。



「……大学は、東京に行こうって、高校生になったときからずっと考えてたんだ。向こうなら、友達も親戚もいるから、母さんも納得してくれたし」

「………」



シンがこの街に来たキッカケは、ご両親の離婚だ。

彼のお母さんはいつも笑顔でやさしくて料理も上手だけれど、ちょっと過保護なところもある。

そんなお母さんを説得できたということは、きっとそれだけ、シンが真剣に話をしたということで。
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