続・危険なキス
顔を上げたあたしに、先生は一度ちらっとあたしへ振り向く。
だけど発進していることもあり、すぐに前を向きなおした。
「お前、何勘違いしてんの?」
「え……」
呆れ気味の声に、ぽかんとしたまま先生を見つめる。
先生はため息をはくと、道路わきに車を停めた。
ギッ…とサイドブレーキが引かれ、先生があたしへ振り向く。
その瞬間、ドキンとした。
「勝手に勘違いして、へこんでねぇ?」
「……そ、んなこと………だって……」
「だって?」
うまく言葉が出てこないあたしに、先生は誘導するように言葉を繋げる。
昨晩のことを思い出して、勝手にじわりと涙が浮かんできたけど、なんとかそれを堪え、俯いたまま口を開いた。
「見ちゃ、った……から……。昨日……」
「昨日の何を?俺と美香が会ってるところ?」
「……はい…」
頭上から聞こえる、澄んだ声。
怒っているわけでも、呆れているわけでもない。
ただあたしから出される言葉を待っていた。