続・危険なキス
 
顔を上げたあたしに、先生は一度ちらっとあたしへ振り向く。

だけど発進していることもあり、すぐに前を向きなおした。



「お前、何勘違いしてんの?」

「え……」



呆れ気味の声に、ぽかんとしたまま先生を見つめる。

先生はため息をはくと、道路わきに車を停めた。



ギッ…とサイドブレーキが引かれ、先生があたしへ振り向く。

その瞬間、ドキンとした。


「勝手に勘違いして、へこんでねぇ?」
「……そ、んなこと………だって……」
「だって?」


うまく言葉が出てこないあたしに、先生は誘導するように言葉を繋げる。

昨晩のことを思い出して、勝手にじわりと涙が浮かんできたけど、なんとかそれを堪え、俯いたまま口を開いた。



「見ちゃ、った……から……。昨日……」

「昨日の何を?俺と美香が会ってるところ?」

「……はい…」


頭上から聞こえる、澄んだ声。

怒っているわけでも、呆れているわけでもない。

ただあたしから出される言葉を待っていた。
 
< 101 / 344 >

この作品をシェア

pagetop