続・危険なキス
 
「10年間引きずってた美香の存在は確かに大きいかもしんない。

 けど……

 俺にとっては、何年も引きずってた想いをはぎ取った紫乃のほうが、ずっとずっと大きい存在なんだけど」


「…っ」



体を離して、少し微笑みながらあたしの顔を覗き込む。

その瞬間、今まで自分が考えていたことが恥ずかしいほどバカらしく思えて……


「あた、し……
 バカ……ですね……」

「ああ」

「ああ、って!」

「でもそれだけ、俺のことが好きってことだろ」

「……」


当たり前のように返してくる先生。


悔しいけど、一つも間違っていなくて……

先生の一つ一つの言葉で、一喜一憂してしまう。



「先生……
 あたし、昨日過去最高速度で走ったと思います」

「それはすげぇな」

「足がもつれて転びました」

「ドジ」



気づけば、いつもの二人に戻っていて
そんなやりとりが愛しくてたまらない。
 
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