続・危険なキス
 
姿を覗き込んだわけじゃないけど
その声の主から、そこにいるのは


美香さんと

川崎さん……。


息を殺して、二人のやりとりに耳を傾けていた。



「でももう10年も前の話だし!
 今はこの通り、平気だよ!踏ん切りもついたしね」

「……」


川崎さんの深刻な声色とは反対に、美香さんの声は明るくて、
暗くなってしまった雰囲気をなんとか戻そうとしているのが分かる。


「もうこの話はおしまい!

 私は帰るね」


その言葉とともにハッとし、あたしは慌てて裏口から店内に戻った。



別に知らなかったことじゃない。

美香さんが過去に自殺未遂をしてしまったことは、先生から聞いてる。
美香さんもあたしが知っていることを知っている。



それもあり、
あまり深く考えずにレジの前に立った。
 
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