続・危険なキス
 
「ゆ、湯浅先生……」


振り返った先にいたのは、
この学校の女子すべてが魅了されているであろう、湯浅奏人先生。


3年、物理の先生であり
あたしのクラスの担任であり

そしてもともとは
あたしの家庭教師の先生であった。



「クラスの配布物があるので、取りに来てもらっていいですか?」
「あ…はい……」


あたしは一応学級委員。
だからこういった、クラスでの用事を頼まれることは普通。


だけどそれ以上に、今の状況で湯浅先生に呼び出されるのは非常に怖い。



「えっと……じゃあ……」
「……あ、……うん」


あたしは今もなお、うなだれながらも気まずい顔をしている彼に一言挨拶をすると、慌てて湯浅先生もとへ駆け寄った。


湯浅先生は告白してきた男子にぺこっとお辞儀をすると、先を歩く。

その顔は、微笑を浮かべ、優しい先生そのものだ。



だけど……



あたしには悪魔の微笑みにしか見えない。
 
< 2 / 344 >

この作品をシェア

pagetop