続・危険なキス
あたしは確かに、人よりは頭がいいかもしれない。
それはその分、努力を積み重ねてきたからだけど。
だけど決して、譲れないものだったり、得意分野があるわけではなくて……
「夢、って……いいですよね」
なんとなく、美香さんの夢を語るキラキラした瞳を思い出すと、そう思わずにはいられなかった。
「ま、俺にはわかんねぇけどな。夢なんてねーし」
「……先生はそういう人ですよね」
「俺に夢や理想を押し付けんな」
「分かってますよ」
現実主義。
冷めた感情。
それが先生だ。
「でも、守りたいものはできたけどな」
「はいはい」と、どんな言葉が来てもそう返すつもりだったのに、予想外の言葉を聞いて口を開けたまま先生を見つめた。
先生は何事もなかったかのように、近くにあった本を手に取っている。