続・危険なキス
 
「え?あの……さっき話してた、夢を追いかけてる先輩ですけど……」

「あ、ああ……。そうか」

「どうかしました?」

「いや。なんでもねぇ」


先生はベッドから立ち上がると、デスクの上から煙草をとる。

カチッと火をつけて、煙を吐き出した。



「そうめずらしくもない名前だしな」

「え?何か言いました?」



どこか遠くに向かって、小さく吐き出された言葉。

ベッドとデスクという距離で、その言葉はあたしの耳には入らない。


「ん。今日の紫乃も可愛かったな、と」

「なっ……」


再び吐き出された言葉は、多分さっきつぶやいた言葉とは別の言葉。


だけどすり替えられた言葉を、それ以上問い詰めることは出来なかった。




ざわざわ、と。
ほんの少しだけ掻き立てる不安。


先生の心のどこかに、自分ではない誰かがいるような気がした。
 
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