続・危険なキス
 
とはいえ、閉店まであと30分。

店内にも、数人のお客さんしかいなくて、あたしがすることは何もない。

そう思っている矢先だった。


自動ドアが開き、咄嗟に営業スマイルを向けた。



「いらっしゃ……」

「……」

「せ、先生っ……」



そこに現れたのは、まさかの湯浅先生で、営業スマイルが一変して驚きの表情に変わる。

先生は面白そうに微笑むと、すぐにあたしの目の前まで来た。


「な、何しに来たんですかっ……」
「紫乃の仕事っぷりを見に」
「やめてくださいよっ……」


一応、周りにお客さんがいることから、こそこそと小さい声で反論する。

だけどここまで来て、引き返す先生ではない。


「エスプレッソ。ホットで」
「え……」
「俺、客だから」
「……」


それを言われては、何も言い返せない。

あたしは仕方なしに、その注文を受けることにした。
 
< 36 / 344 >

この作品をシェア

pagetop