続・危険なキス
 
確かに先生は、あたしと付き合う前まで、ずっと美香さんのことを引きずっていた。


また自分が誰かを好きになってしまったら、その人が美香さんと同じように自分を傷つけてしまうんじゃないかと……。


あたしと会ったことで、誰しもがそうはならないと分かってはくれたけど、もしかしたらまだ心のどこかでそんな不安が残っているかもしれない。



「私もそれがずっと心残りで……。
 自分がまた、誰かを本気で好きになったら、同じことを繰り返すんじゃないかっていう不安もあったりするの。

 だからそうじゃない、って……
 過去の自分とはちゃんとバイバイするんだ、って……

 そのために、奏人くんと話がしたいの」


「……」



必死になって懇願する美香さんに、もう拒む気持ちもなくなっていた。


本心では、本当は会わせたくなんかない。

先生を信じてないわけじゃないけど、よりが戻ってしまうんじゃないかという不安は消せないから。


だけど……





「………わかり…ました。

 先生に聞いてみます……」





目にいっぱいの涙をためながら、あたしの手をとる美香さんのその手を
振り払えないのはあたしの性格だ。

 
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