続・危険なキス
「……ちゃん、……紫乃ちゃんっ……」
「え?」
なんとなく耳に入ってきた自分の名前。
慌てて振り返ると、眉を寄せて、不思議そうにあたしを見つめる川崎さんが。
「お皿、洗い終わったんじゃないの?」
「え?あっ、すみませんっ……」
言われて気が付く。
お皿洗いをしていると思って、水を出していた蛇口の前。
無意識に水切りにグラスとお皿は積まれ、あたしの手の中にはもう何もなかった。
指摘されたことに恥ずかしさを感じながらも、慌てて蛇口の水を止めた。
「紫乃ちゃんがぼーっとしてるなんてめずらしいね。
何かあった?」
「いえ……なんでも、ないです……」
心配そうに顔を覗き込む川崎さんに、これ以上悟られなくて首を横に振った。
ちらりと見た時計。
もうすぐ8時を示す。
美香さんは7時に上がっていて、この近くの公園に8時に先生と待ち合わせている。
(好き、って……言っちゃうかも……)
さっきの、美香さんの言葉が頭から離れない。