今宵、真夜中の青を注いで
多分、楓の言うようにただのロマンチスト。
具体的な何かがある訳じゃないけれど、今とは違う何かを望んでいる。
なんて曖昧な願望なんだろう。
何かに夢中になったり、一生懸命になったことがないからなのかなって最近は思う。
将来何になりたいといった確固たる夢があるわけでもない。
勉強は人並みよりほんの少し良いくらいで、運動もそんなに不得意なわけじゃないけど得意なわけでもない。
小さな頃からやってるピアノだってよく伴奏を頼まれる子達のようには上手くはなかったし、練習が面倒になって中3の頃に止めてしまった。
今時の高校生らしく恋をしたことだってあるし、付き合ったことだってあるけどなんとなく違うような気がした。
なんとなく当てはまらないパズルのピースの違和感が心を水分をいっぱいに染み込ませた重いもやもやで満たしていく。
「ああもう、またぐるぐる考えてる。空気入れ替えて頭冷やそう」
ソファから立ち上がり、窓際の方へと歩いていく。
カーテンを捲り、窓に手を掛けて手が止まった。
「今日の星、綺麗だな」