今宵、真夜中の青を注いで


気付いたらあたしは防寒準備をばっちりして玄関の扉に手を掛けていた。

もうその行動は殆ど無意識で、その行動理由が何かと言われたら星に魅せられたとしか答えられない。

毎日夜になれば見ることの出来る星達に突然魅せられた、なんておかしな話だけど、静寂が包む世界で一生懸命その身を焼いて輝き自らを主張する星は今あたしが焦がれるものだったのかもしれない。


 力を込めてめいいっぱい押し開くと、ぶわりとすぐそこに迫った冬の空気が頬を撫でる。

思ったより外は真っ暗で、其処には人っ子一人いない不気味なくらい静かな夜の街があった。


 此処は夜でも輝く都会と言う訳ではなく、駅の周りを囲むように10階程度のビルと大きなスーパーマーケット、飲食店などが並んで、其処から少し抜ければ住宅街と田んぼがひしめき合う。

比較的田舎に近い静かな街。

だから、人工的な明かりは少なく、かわりに静かに自己主張する星の輝きの方がよく見える。

それは今日も例外ではなく、その上晴れているからか幻想的な世界を作り出していた。



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