今宵、真夜中の青を注いで


「またあの丘に来た時は教えてやるよ」


夜久君の顔に見入っていたあたしは続きの言葉に目を見開く。


「いいの?」

「ああ、本で見るより実際に見ながらの方が楽しいだろ」


嬉しい申し出に頬が緩むのが分かる。


「そうだね。じゃあ、今日も同じ時間に行くから教えてもらっていいかな」

「おう」


優しく微笑む夜久君を見て、「ありがとう」と返した。

またあの場所で談笑しながら星を眺められる。

そう思うと今からわくわくして。

今日は本当に良い日だと、気分が上がるあたしはきっととても単純なやつだ。

それから夜久君とは「楽しみにしてるね」と言って別れた。

時計を見ると昼休みが終わる5分前で、あたしはさっき手にした星の本を手にカウンターへ向かう。

自分の名前の書かれたバーコード付きのカードを差し出して、本のバーコードがついた面を向けてカウンターに置く。

すると、ピッと言う電子音を立ててパソコンにその情報が読み込まれた。



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