今宵、真夜中の青を注いで


「はい、どうぞ。2週間後に返しに来てくださいね」


今日が当番なのだろう図書委員の生徒の事務的な言葉を聞いて頷いた。


 きょろきょろと視線を彷徨わせると既にバーコードを通したらしい本を持って楓が暇そうに入口に立っているのを見つける。

小走りで駆け寄ると不機嫌そうに口を開いた。


「お、そ、い」

「ご、ごめん」


ご立腹な楓様は手を組んでふんぞり返る。

ひえー、こわいよー!

へこへこと頭を下げると満足したように『別にいいわよ』とけらけら笑った。


「それにいいもの見たしー?」


にやにやと嫌な笑みを浮かべる楓は心底意地の悪いおとぎ話に出てくる魔女のような顔をしている。


「いいもの?」


なんとなく嫌な予感がしつつ聞き返せば待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。

嫌だ、楓のこの顔はなにか企んでる時だ。

絶対に碌なことにならない。




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