今宵、真夜中の青を注いで
居心地悪そうな夜久君の歯切れの悪い返事はとても新鮮だった。
新鮮、なんてこと思うあたしもおかしいかもしれないけれど。
でも、この二日でいろんな夜久君の表情を見てなかなか変わらない表情を見るのがとても新鮮で楽しいんだ。
「意地悪言ってごめんね。でも、馬鹿にしてるんじゃないんだよ。とっても好きなことに真っ直ぐなんだなあって羨ましくなっちゃった」
「羨ましい?」
意味が分からないと言った彼に「うん!」と大きく頷いたら「お前の方こそおかしい」と一蹴りされた。
あたし、そんなにおかしいかな。
羨ましいよ、とっても。
好きなことがあるのは。
そんなに夢中になれることがあるのは。
あたしにはないから、とても羨ましい。
「変なこと言ってないで早く座れよ。あんたも流石に足疲れるだろ」
面倒だと言わんばかりのその表情なのに、気遣いの言葉はあるんだから夜久君はおかしな人だ。