今宵、真夜中の青を注いで
「でも、あたしに譲ったら夜久君が寒くなって風邪引いちゃうよ」
「俺はいいから。風邪引いたのも昔だし別に寒くないし気にしなくていい」
そこまで言われるとあたしが断る理由はなくて、申し訳なく思いつつもその好意に甘えることにした。
そろそろと寝袋に近づくとまだ夜久君の体温が残っていて温かい。
私とは違う、夜久君の匂いがして、男の子に慣れていないあたしは少しだけどきどきしながら潜り込んだ。
「ふふっ、あったかーい。夜久君ありがとう」
「おう」
座って見上げていると首が痛いからごろんと寝転がって、どちらからともなく空を見上げ、静かに眺める。
昨日話していたオリオン座は1回見つけてしまえば、すごく見つけやすい星座だと思う。
寧ろ一番簡単。
同じ冬の大三角のおおいぬ座とこいぬ座の方が難しい。
「おおいぬ座の形はもう覚えた?」
星空を見上げたままの夜久君の表情はあまり見えない。
でも、少しだけ声が弾んでいるような気がした。
「うん、覚えたよ」