今宵、真夜中の青を注いで
「あたしだって楽しいよ。でもね、あたしそんなに良かったって言ってもらえる人じゃないよ。
夜久君と此処で話すまでずっと近づきにくい人だったから。女の子のこととことん避けて、告白した子はこっぴどく振って、ちょっと怖い人だなって思ってた。
きっと、此処で話さなかったらずっとそんな風に思ってた。酷い人だよ」
勢いよくそこまで言ってハッと我に帰る。
こんなこと言ったらあたし、夜久君に嫌われちゃうんじゃないかな。
鈍色の雲みたいな不安があたしの心を覆う。
でも、次の瞬間に耳に飛び込んできたものは意外なものだった。
「そういうとこ。碧海って素直だよなあ。絶対嘘吐けないだろ?」
歯を見せてニッと不敵に笑う夜久君を見ても、本当に、全然、何を言っているか分からない。
「怖い人だと思ってくれてたなら俺の計画通り。俺は嫌な奴だと思って欲しくて関わらないようにしてたんだから当然だろ。
関わりなんてほぼなかったんだから、俺の事情なんて関係ない。別に碧海が悪いと思うことじゃないよ」
あたしが悪いと思うことじゃない?
ってことは怒ってない?
「それより今はどうなの? 俺今でも怖い?」
優しく笑って顔を覗き込む夜久君を見て、息を呑んだ。