今宵、真夜中の青を注いで
「次はないですから」
怒気を含めた声はこの場の空気を数度冷えさせた。
もう用はないと言うように、突っ立っているあたしの手を掴んで歩いていく。
突然のことに成すがまま、あたしは夜久君に連れられ、後ろを歩く。
その時後ろでちらりと見えた先輩達の姿は魂を刈り取られた人間のようだった。
人目も憚らずにずんずんと夜久君は大股で歩いていく。
手を掴まれた時は思考が付いていけなかったけど、これはだめだ。
すごく目立つと言うのも勿論あるけど、なんか心臓が変になりそう。
それに夜久君の歩幅に付いていけず、少し不格好な歩き方になる。
「夜久くんっ、はやいよ!」
いかにも歩きにくさに耐えられなくなったというように伝えると、漸く手を掴んだままでいることに気付いたらしい夜久君がパッと手を離した。
「ごめん。痛くなかった?」
「ううん、大丈夫だよ。それより、助けてくれてありがとう」
言いそびれていたお礼を漸く言えた。
ほっとしたのも束の間、夜久君の顔は心配そうに顔を歪めた。
「いや、ありがとうなんて言われるほどのことしてない。それより怪我してないか?」
「うん、夜久君が助けてくれたおかげで何もされてないよ」
「そうか、良かった......」