今宵、真夜中の青を注いで
心の底から安心したというようなホッとした笑みに不覚にもどきりとするのが分かった。
いやいや、今はそんな状況じゃないと首を振るけどなんとなく頬が熱い気がする。
でも、次の瞬間、夜久君がまた顔を曇らせるからすぐに熱は引いた。
「良かった、わけないな。もっと早く気付くべきだった。まさかこんなことされてるなんて思わなかった」
「何言ってるの? それはあたしが誰にも言わなかったから」
「でも、碧海の良くない噂が流れてるのは知ってた。こうなることくらい予想できたのに、迂闊だった」
苦虫を噛み潰したような表情で『ごめんな』と付け加えた。
「違うよ。夜久君はなにも悪いことしてない。それどころかあたしを助けてくれたよ。ありがとう。あのままだったらあたし叩かれてたよ。本当にありがとう」
心からの言葉を述べているのに夜久君には伝わらない。
首を振って険しい表情をするだけ。
嗚呼、こんな顔させたいわけじゃない。
違う、違うって言ってもきっといつまでたっても伝わらない。
だったら、どうすれば伝わる?
どうすれば笑ってくれる?
「わわかった! も、もしそれでも納得できないならまた今日みたいに助けてほしいな、なんて流石におこがましいか」
あはは、と乾いた笑いを零した時『いいよ』という返事が返ってきた。