今宵、真夜中の青を注いで


それは楓が頼んだからだろうけど、それでも夜久君には関係なかったことだったのに、助けてくれた上にまだ守ろうとしてくれる。

それが温かくて、安心できて、それと同時に少しだけ怖い。

あたしが君にとってもしかして特別なんじゃないかって勘違いしそうで怖い。

あの丘で会う印象とは遠すぎて、普段学校で女の子と接する態度とは違いすぎて、どきどきしてしまう。

仲良くすると誰にでもこんなことしちゃうのかな。

もしそうだったならすごく残酷だ。


「別に俺は優しくない。それより、約束。何かあったら言うこと。分かった?」


いつもより優しい声音と共に差し出された小指を見て驚く。


こういうこと簡単にしちゃうんだ。

夜久君ってやっぱりずるいよ。


 一瞬、躊躇った手をそっと差し出して小指同士を絡めた。


「分かった」


それは少しの間だけだったのに、夜久君の温かな体温があたしに乗り移ったみたいだった。

冷え症のあたしの手がじんわりと熱くなっていく感覚がする。

その熱が広がって身体中の血液の温度が上がっていく。

それに心臓がいつもより大きく聞こえるのは気の所為?

その時、今日のお昼に言われたことを思い出した。


『絶対好きになるよ』



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