今宵、真夜中の青を注いで
「ほら早く準備しろー。私はダイニングで待ってるね」
そう言われてしまっては何も言えなくて、あたしは成す術もなく部屋に取り残される。
さっき折角止めた溜息を吐きだして、漸く学校へ行く準備を始めた。
昨日はあの後、夜久君に送ってもらって、すぐにホットタオルで目の辺りを温めたおかげで腫れずに済んだ。
その後帰ってきたお母さんとお父さんに何も言われなかったから多分、そんなに酷い顔はしていないはず。
普段通りを装ってはいたけど、心の中はやっぱり自分のこの想いを整理出来なくて、思考は堂々巡り。
あたしが気付くよりも前に気付いていた楓にそれを追求されるんじゃないかと思ったら、どう話せばいいか分からなかった。
だから昨日のうちに連絡しようと思いつつ、躊躇って、やっぱり連絡しようと思ってはまた躊躇って、その間に眠ってしまったのだ。
でも、此処へ来たということはやっぱりもう既に昨日のことは話が広まっていて、楓はもう知っているのかもしれない。
どちらにせよ、楓に確かめなければただの推測。
学校へ行ったらもっと大変だろうし、憂鬱だ。
今日何度目かの溜息を吐いて、楓が待っているだろうダイニングへの扉を開く。
「それにしても楓ちゃんが朝から来るのは中学以来よね」
「あー、確かにそうですよね。中学まではいっつも遅刻しそうな雪穂を迎えに来てましたし」