今宵、真夜中の青を注いで
「もう困った子だわー。高校は起きられないからって近い所選んだしあの子の将来が心配だわ」
「あははっ、ちゃんと目覚ましで起きるようになったしきっと大丈夫ですよー」
テーブルで談笑をする楓とあたしのお母さんに眩暈がしそうだった。
なんなんだ、この失礼な人達は。
さっきとは別の意味で溜息を吐きそうになっていると、楓があたしに気付いた。
「あ、もう用意出来た? ご飯出来てるよー、ってなんで突っ立ってるの?」
「別に突っ立ってなんかないもん」
少しだけ苛立ちを滲ませて、自分の席に着く。
するとお母さんが『さっきの話聞いて怒っちゃったのね』と言ってクスクス笑うから、睨んだ。
それからもあたしが朝食を食べる横でお母さんと楓は楽しそうに人のことを散々バカにしてくれた。
そのおかげか、さっきまでの憂鬱なんていつの間にかどこかへ吹っ飛んでいて、感謝をするわけじゃないけど、少しだけ、ホッとした。
「はーっ、楽しかった!」
朝食を食べ終えて、そろそろ学校へ行く時間だからと家を出て通学路を歩きながら一言。
とても満足そうに楓は言った。
「朝カラ楽シソウデ何ヨリ」
朝からご機嫌が宜しい楓には、この乾いた冷たい声も冷たい視線も意味がないらしい。
尚も隣で楽しそうにからからと笑う楓に恨みが募る。
「はははっ、雪穂の顔死んでるー」
誰のせいだと思ってるんだ。