今宵、真夜中の青を注いで
そう思ったのに言えなかったのは、楓がいつも通りにしてくれたからだ。
何も聞かずにいてくれる楓に甘えてるあたしが情けなくて仕方がなくなった。
それは空気を伝い、楓にも伝わったようで、なんとなく居心地の悪い空気が流れる。
二人分のコンクリートを蹴る音だけが響く。
そして、それを破ったのは楓だった。
「これでも私ね、怒ってるんだよ」
少ない言葉数で確信に迫るような物言いにびくり、と肩を揺らす。
「数日前から様子がおかしいことは気付いてたんだよ。でも雪穂が話さないから、気付いてないフリをした。
でも、正直むかついたし、何も言わないならこっちは助けてやらないんだからって思ってたんだ」
むかついたという言葉にどれだけの意味が込められていたんだろうと胸が痛くなった。
付け足すように『そんなことは無理だったけどね』と言われて、胸が苦しくなった。
「昨日、夜久君から連絡があって、何かあったことだけは聞いた。
3年生の集団がこそこそと雪穂の下駄箱に何か入れてるの見て夜久君に頼んだからなんとなく察しもついてる。でも私は雪穂の口から聞きたいんだよ。
今日学校へ行って噂話で聞きたくないから私は此処に来たんだよ。ちゃんと話してくれないかな?」
楓はあたしより事の次第を知って夜久君に来てくれるよう頼んだんだね。
それで予想通り何かあったのに、あたしが昨日の間に話さなかったから心配して来てくれたんだ。