元カレ教師~君と出会った物語~
「私が妃奈と出会ったのは、中学3年生になる直前でした。
私は妃奈と同じ塾に通う事となり、しかも同じクラスでした。
その事がきっかけで私達は友達になりました。
恥ずかしながら、私は人付き合いが下手で、それまでは友達と呼べる人がいたかどうかも分からないような子でした。
そんな私にとって妃奈は、初めての“本当の友達”でした。
私の話をよく聞いてくれて、私の成績が伸び悩んでいる時には、最後まで一緒に頑張ろうと励ましてくれ、塾の授業のない休日も図書館や塾の自習室で共に勉強しました。
そうやって妃奈に助けられながら、私は無事、妃奈と同じ高校に行く事が出来ました。
あの時は、高校に合格出来た事も嬉しかったですが、妃奈が私の合格を自分の事のように喜んでくれたのがもっと嬉しかったです。
高校生になり、放課後に2人で遊ぶ事も多くなり、私達は更に仲良くなっていきました。
ですが、2年生の冬に私が家の都合で他県に引っ越す事になり、転校する事になりました。
最初私は、その事を妃奈に言えませんでした。
毎朝、今日こそ言うぞと思いながらも、学校で妃奈の笑顔を見ていると言えませんでした。
妃奈と気軽に会えない生活を受け入れたくなかったのです。
私が長らく言わなかった事もあり、妃奈は私が告げる前にその事を知ってしまったのですが、改めて自分の口から話した時の事は今でも忘れられません。
妃奈とは3年近く一緒にいたのに、私が見た中で最も悲しそうな顔をしてました。
実は妃奈が事前に聞いた時も、私は妃奈が見える距離の所にいたのですが、その時も辛そうな顔をしていたのに、より一層苦しそうでした。
もっと早く言えば、良かったかもしれないと思いました。
そしたら妃奈はあそこまで辛くなかったかもしれません。
引っ越すまで、その後悔が心で渦を巻いていましたが、いざ東京を出て、妃奈のいない生活が始まって気付いたのです。
私1人の事で、あんなにも悲しんでくれたのは妃奈だけでした。
私はそんな素敵な子の親友です。
それまで友達なんて殆どいなかったのに…今後神様が与えてくれるであろうどんな出会いよりも、妃奈と出会えた事が私の人生で一番の幸福です。