元カレ教師~君と出会った物語~
本当にこの子は妹が好きなんだな。
俺は改めて思った。
「ああ。
妹の話じゃなくて、玲奈の話な。
あの長いスピーチを短時間で作って、しかも覚えてきたんだろ?
すげーなって思って。」
「そうかな?
本当はね、もっと長くなる予定だったんだけど…」
「え?
もっと長かったの?」
「そう。
でも妃奈がこのエピソードは恥ずかしいから嫌だとか、皆には秘密だから駄目とかで、何個か消したんだよね。
だから、あの長さ。」
それでも十分長いのに、玲奈は残念そうに肩を竦めた。
「そう、なんだ。
…また妃奈ちゃんの話も聞かせてくれよな。」
「うん!!
時間がある時にゆっくり!」
前言撤回、玲奈のことを知る為には、妃奈ちゃんが必要不可欠のようだ。
それから玲奈は自分から話す時が来ると、決まって妃奈ちゃんの話をするようになった。
俺たち3人は、妃奈ちゃんの話の中で、玲奈がどんな人物を理解するようになっていった。
玲奈は面白くて、妹を溺愛してて、でも優しくてしっかりした良い子だった。
勿論この時はまだ、俺と玲奈が義理の姉弟になるなんて思いもしなかった。
運命とは不思議である。
そしてこの次の春、桜が咲き始めた頃
俺は、玲奈と仲良くなるきっかけである妃奈ちゃんと出会うのだった。
でも、それはまた別の話である。