元カレ教師~君と出会った物語~
*Fourth story* 妃奈と真幸


「お疲れ様です!」


俺は先輩や上司に向かってそう言うと、駅に向かった。


俺の名前は村田真幸、建設会社のサラリーマンで、現在婚約中の彼女がいる。


彼女は社会人になってから出会ったんだ。


大学4年生の時に失恋して、傷心中だった俺を救ってくれた人だ。


その彼女に今とても会いたいが、生憎彼女は友達と旅行中なのだ。


俺は1人で飲もうかと、方向転換して土曜日の夜の街を歩き回る。


日曜日の前夜を楽しむ人々の間を通り抜けながら、俺は適当な店を探した。


そして、ひっそりと佇む小さな居酒屋に入る事にした。


派手な店ではないせいか、客は少ない…と思ったら違ったようだ。


「すいません。
今日は貸し切りで。」


「そうだったんですか!
すいません。」


そう言って、俺が出ていこうとした時だった。


「いいよ。
もう殆どの先生が帰られて2人しかいないし、1人なら。」


「昴がそういうなら。
何度もすいません、宜しければどうぞこちらに。」


「ありがとうございます。」


俺は店の人に言ってから、貸し切っていた人にもお礼を言おうと近付いた。


「すいません。
本当にありがとうござ…」


おれは途中で言うのを止めてしまった。


それは、何年も前に会った人だった。


「いいんだ。
皆帰ってしまったし、1人は眠ってしまってるし…」


その人も俺の顔を見て固まっていた。


「貴方は確か…村田さんですよね?」


「はい。
村田真幸です。
北条昴さん、でしたよね?
お久しぶりです。」


これはなんという偶然だろうか。


俺は出会ってしまった。


元カノ-妃奈-の好きだった人に。


「久しぶり。
あの時一度ご飯に行った時以来だったかな?」


「そうですね。」


奇妙な会話だった。


お互いが何を、どこまで話したらいいか迷っている状況だった。


そんな流れなのに、店の人は俺らが一緒に飲むかと思ったようだ。


ビールを2杯持ってきて、北条さんの座っているカウンターの上に置いた。


「あとはごゆっくり。」


そう言って、店の人はいなくなっていしまった。



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