元カレ教師~君と出会った物語~
「もうすぐなんだけどな…」
3月も末になると、桜で街が彩られる。
そんな季節に、あたしは昴と一緒に買い物に行っていた。
1人で行っても良かったんだけど、何かあったらいけないからと昴が言うので、一緒に行く事になったのだ。
あたしのお腹が大きくなるにつれ、昴は今まで以上にあたしと一緒にいてくれた。
家に帰ってくるのも早くなったし、休日に部活動の指導に行く事も殆どなくなった。
昴曰く、部活動は他の顧問の先生に任せても暫くは大丈夫らしい。
今は学校も春休みに入ったから、学校に行く日は少なくなった。
「ああ。
体の方は大丈夫か?」
「うん。
今は何ともないよ。」
そんな話をしながら、2人で家に帰ってきた。
「俺が片付けておくから、妃奈は先に手洗ってきな。」
「ありがとう。
いつもごめんね?」
「何言ってんだよ。
妃奈は妃奈自身と、お腹にいる子な事だけ考えて。
今は俺の事なんか気にしなくていいから。」
ほら早くと促され、あたしは大人しく洗面所に向かう。
手を洗ってうがいもして、やっぱり手伝わなきゃと思って冷蔵庫に向かおうとした。
その時だった。
あたしは一瞬動かなくなる。
激しい痛みが腹部に襲いかかった。