Love yourself

嬉しい気持ち

あたしが渚に恋をしてから何週間後。
――2012年7月13日――

「おーい!また渚の事見てる。なんであんな男の事好きなのかねぇー」
「うぁ!由衣。ビックリしたー…、なんでカッコイイと思わない?」
「全然思いません。いいから早く片付けろ」
「はーい…」
由衣は渚が嫌い。なんかキモいとか言ってた。
あたしはそうは思わないんだけどなー。好きな人だから?
でも由衣の言う通り、どんだけ渚の事好きなんだろ。
なぁーんてごちゃごちゃ考えてたら部活終わってた…。
3年の先輩方、もう帰っちゃったしあたしも片付けたらかーえろ!

「あ、彩華!今日塾あるから先に帰るね!バイバーイ♪」
「うん、バイバーイ!」
今までは由衣と帰ってるんだけど最近由衣が塾に行き始めた。
『このままじゃ頭悪くなっちゃう!!!』とか言ってたっけ…?
あたしより頭良くて成績上位なのにどうして塾行くのかねぇー…。
由衣がやばかったらあたしは何なんだろう。
あたしもなんとかやらなくちゃ!

「彩ー」
「七海先輩!」
七海先輩はあたしの事を“彩”と呼ぶ。
彩華まで呼ぶのがめんどくさいらしい…。
「どうかしたんですか?」
「あー…、渚が彩と一緒に帰りたいって」
「え…。ホントですか?」
「うん、ホント。呼んでこいって言われたから呼びに来た」
「ありがとうございます」
「いえいえ。あと、そろそろ渚に告白してみれば?(笑)じゃあねー」
「あ、さようなら…。ってえぇぇぇぇぇぇぇ!」
七海先輩、なんで知ってるの。あたしの好きな人…。
そんなわかりやすいのかなぁ、あたしって。
……告白かぁー。まぁ、振られるからいいや。
ブツブツ言いながら渚の所へ向かった。

「やっと来た。遅ぇよ」
「ごめん、ごめん」
「ま、いいや。帰るぞ」
「うん…」
怒らせたかな…。
なんであたしと一緒に帰ろうなんて…?
「ねぇ、なんであたしと一緒に帰ろうと思ったの?なんか、話あるとか?」
「おぅ」
「なんの話?」
「俺さ、好きな人出来たんだ」
「!!」
嘘…。誰なんだろう…、気になる。
もしかしてもうあたしの恋終わっちゃう!?
でもなんでそれをあたしに言うのかな。
由衣とか七海先輩とかじゃダメなのかな。
「そ、そうなんだ。その人…可愛いの?もしかして女子バスケ部の人とか?」
「そう、女子バスケ部。なんでか知らねぇけど気がついたらそいつの事目で追ってた」
あたし何やってんだろ。自分で自分の首絞めてるだけじゃん。
女子バスケ部って事は…由衣?それとも七海先輩?

「そいつさ、すげぇバスケ下手なの。ドリブルもまともに出来ねぇ奴で、でも教えてやったら素直に聞いてすぐ吸収してやれば出来る奴でさ。…しかも一緒に帰ってやるって言ってんのに俺の事すげぇ待たせて…俺の事好きじゃねぇーのかよ!?って自分で思ってしまうけど、でもやっぱり俺の事ずーっと見てんの」
それってもしかして…。
「俺の好きな人…お前だよ。“彩華”」
ホント?今の聞き間違いじゃないよね?
泣けてきた…。
「…グスッ」
「お前…泣いてんの?(笑)」
「だってぇ…グスッ、すごくグスッ嬉しい…グスッ」
「お前すげぇ顔」
「みるなぁ…」
「無理、可愛いもん。…なぁ、俺と付き合ってくれる?」
「……うん」

あたしはこの時のことを今でもはっきり覚えてる。
告白された時、死ぬほど嬉しかった。このまま時間が止まればいいのに、って。
心の中で色んな想いがこみ上げてきた。
でも、それは全部渚の事。その時のあたしは渚しか頭になかった。
幸せな気持ちでいっぱいでした。

でも今となっては、あの時幸せだと思ってたのはあたしだけだった気がする。
あの時の想いは一生忘れられないよ…。
だって今も覚えてるから。
――2012年7月13日 渚と付き合い始めた日――
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