これが、最初の手紙です。
それから…
ざーっと、海の音が聞こえる。

俺はすごくツいてるよなー。
余命宣告を受けてから、海に近い病院に入院をし、今治療を受けている。
悔やんでも悔やみきれないのは、結婚したいと思っていた彼女のことだ。
彼女を幸せにして、幸せになりたかったなー。
目を閉じて、そんなことを考えながら、海の音に耳を傾ける。

かつん、かつんと病院の廊下に響くハイヒールの音がしたと思うと、ジャッと晶のベッドのまわりのカーテンが開けられる。
晶は、目を見開く。

「…!早恵っ!!なんで!!」

彼女は、肩を大きく上下させて、顔を険しくさせ晶を睨む。

「なんで?…じゃないわよ!!このうすらトンカチ!!」
「うわー、ごめんなさいぃ!」

殴りかかってきそうな勢いで、乗り出すが思いとどまり握りしめられた、拳をおろす。

「迷惑をかけずに、いくのが私のためなんて、アンタの勝手な解釈でしょっ!」

ぽろぽろと目からは涙が出てくる。
晶の声だ…
晶は、優しく子供をあやすように話しかける。

「どうやって、ここの場所をみつけたの?親にはく口止めしたはずだけど。」
「…お義父さんも、お義母さんも口を割ってくれなかったけど、県内って聞いて…」
「うん。」
「アンタずっと前、死ぬなら海の見えるとこで死にたいって言ってたじゃない。」
「やっぱり君は、名探偵だろう?」

「詰めが甘いのよ。」

「前もあったなこんなこと。」と見慣れた笑顔を向けてくる。

< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop