金色・銀色王子さま
「そ、そうなんですよー!友達もいたし、デートじゃないですよふふふっ」
「あらそうなの~?まぁいいわ♪これからも仲良くやってちょーだいね隣人さん同士」
「そうですね!隣人さん同士っ!ねっ、片桐」
「……………」
大家さんはひとしきり雑談をしたあと、“寒い、寒い”と先に入っていった。
厄介な相手をしていたのは終始、麻衣で龍之介は一言も口にしなかった。珍しい光景では無かったが、短いエレベータ内でも喋らずすぐに部屋の前に着いた。
「じゃっ」
「あっ!ちょっと待ってよ!」
あまりにもアッサリした別れ際に思わず片桐の腕を掴んだ。
「…今日はほんとにありがとう」
「……………」
「ホントはね。もし1人で見送りに言ってたら何も言わずモヤモヤして…挙げ句、カイト見たら泣いてたかもしれない」
「…だよな。あんた、ちょっと泣きそうだったし」
「ば、バレてた?!片桐には…隠し事出来ないわほんとっ」
「…………」
「でも…もう本当に大丈夫。いっぱい笑ったし、スッキリしたから。全部、片桐のおかげ」
「………」
片桐は無言のまま、少しだけ視線を逸らしている。
この空気はずっと、UFOキャッチャーのときから続いている。
『俺と付き合って』
いつもの冗談なのに…
意識しすぎだよ、私。
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