金色・銀色王子さま

「救急箱置いてるとか…しっかりしてるね」


「……まぁ仕事で包丁使ってるからよく怪我するんだよ」


「……そっか」


ソファに座った私の隣にしゃがんで、手当をしてくれる
背の高い片桐を斜め上から眺めるのは初めてで、サラサラの髪とか長いまつげとか本当に王子さまみたい






「………なに?」


「……ううん。何でもない」


「…………」


「…………」





見つめ合って数十秒、逸らしたのは龍之介の方だった。



「…わりぃ、ちょっと先に風呂入るわ」
そう言って立ち上がるとバスルームに向かう。


「わ、私帰るよっ 」

「あんた、一人でいられんのかよ」

「うっ…」
正直恐かった。
逃げた犯人がこっそり見ていて2階だから部屋に進入してくるかもしれない。
それを想像したら外に出るだけでも警戒してしまう。
すくむ私に、片桐はタオルケットを渡してくれた。



「…ごめんね。迷惑ばっかり」


「謝んなよ。別に俺…迷惑じゃないし」











龍之介がお風呂に入っている間、麻衣は片桐が注いでくれた温かいコーヒーを飲みながらソファに座っていた。


時計は3時近くを回っている。
いつも片桐はこんな遅く帰ってくるんだ…
部屋に似つかないテディベアがニヤツいてきてる気がして、麻衣はツンッと背を向けるようにしてソファにごろんと寝てみた。






なんか…めちゃくちゃドキドキしてる


片桐の声とか、仕草とか、全部意識しちゃうし


ちょっと会わなかっただけで以前の数倍





…会えて、すごく嬉しい…






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