金色・銀色王子さま
【11th room】おはようのキス
それから麻衣は部屋に帰って、ベットに潜り込んだ。
改めての現実を胸に。
指には貼っても目立たないタイプの透明なテープの絆創膏、擦りむいた膝には絆創膏と打った所に湿布。
痛々しい傷はあっても、不思議と気持ちのキズは記憶とともに薄く掠れている。
片桐はちゃんと起きて仕事に行けるかな…
改めて助けてくれたことお礼しなくちゃ…
それから数時間後のことだった。
片桐から着信があって、電話を取ると…
「もしもし」
『もしもしじゃないっつーの。勝手に居なくなってんじゃねぇよ心配するだろ』
お怒り気味の片桐…バタバタ、ガサガサと音を立てながら忙しない様子が電話越しに分かる。
きっとぎりぎりに起きたんだろうと思った。
「だって、片桐寝てるし居座ってるのも悪いかなって思って」
『居座ったっていいだろ…だって』
「…………」
すると片桐はハーとため息を付いた
そして諭すように低い声が耳に届く
『ゆっとくけど、昨日のこと冗談じゃないからな。夢でもなければ、嘘でもない。あんたは…俺が守る。だからさ、信じれないとか言うなよ』
「うん…」
『だから、あんたも…ちゃんと俺を見て』
“俺を見て”
男の人にそう言われたのは初めてだった。
今まで好きになった人や彼氏は全て自分から追いかけていった。
いつも、いつも追いついてはまた少し離れては追いかける。
愛されるより、愛してることが当たり前だった。
なんだか痒くてぎこちない。
その空気が伝わったのか、片桐はあーー!って電話越しに叫んだ。
「な、なに?!」
『いや、なんか…すげー恥ずかしいこと言った気がする…』
そのあと、慣れてないんだよって小さく呟いた声も全部聞こえた。
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