金色・銀色王子さま
【いま、おうち着きました。仕事頑張って】
0時過ぎ。
そうメールを打って5分後、携帯の着信が鳴った。
「もしもし?」
『お疲れさま』
ざわざわした音をバックに、片桐の声。
まだ、その声と向き合うのは慣れてなくていちいち心臓がグッと縮む。
「忙しそうだね…電話、大丈夫なの?」
『うん、終電前でお客さん落ち着いたかな。そっちは?忙しかった?』
「うん、予約はいっぱいだった。あ、今日久しぶりに香織が来てくれたんだ」
『あー…友達の?』
「そう。元気そうだった。また、お店に飲みに行きたいって。香織、ほんとお酒好きだからさ。あ、あとさ!!24日、カイトが帰ってくるって。イヴに帰ってくるとか…」
『悪い、すぐお店戻らないと。あんたが無事に帰ってきたか、確認したかっただけだから』
「あ、ご、ごめん…じゃあ頑張って」
電話はたった30秒の表示とともにツー、ツー…と音が鳴るだけ。
そっと机に置いて、麻衣はベットに腰をかけた。
メール送ったのに、電話をくれた。
それだけで充分なのに、もっと話したかった自分がいてつい相手が仕事中なのを忘れてしまった。
日に日にじゃなく、
猛スピードで想う気持ちは加速しているのがすぐに分かった。
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