金色・銀色王子さま
「藤井ちゃん、お客様着てるよ?」
同僚のサキが目を丸くさせたまま、スタッフルームにいる麻衣のところへきた。
店長と顔を見合わせてから時計を見たらまだ開店まで30分ある。
「朝一の小林様、早めに着いちゃったのかな」
「いや、サロンのお客様じゃなくて男の人。超絶イケメン!」
「い、い、けめん?」
もしかして……
麻衣はお店に顔を出した。
太陽の光が逆光になって、とても眩しかったけど入り込む冷気と一緒に温かい笑顔が目に飛び込んできた。
「やっほー、麻衣ちゃん。ただいま」
「おかえり…カイト」
「一週間もあっちにいるとさ、こっち帰りたいなぁ~ってなって朝一の新幹線で帰って来ちゃった」
びっくりする麻衣の背後から覗く店長に“朝からいきなりすいません”とカイトは軽く会釈をした。
イケメン好きのサキをはじめ皆はもうキラキラ目を輝かせてるし店長はますます含みある笑みを浮かべてきた。
ひとまずこれじゃあ、みんな準備にならないと思った麻衣はカイトと外へでた。
「びっくりしたぁもう。夜帰ってくるって聞いてたから」
「ははっ、俺も思いつきだったから。早く帰ろ~って朝、思いついて。ごめんね仕事中」
「ううん。…で、莉奈さんは?」
「莉奈は俺と一緒に家出て、普通に会社行ったよ。いつも通り、何にも変わらないよ」
カイトは優しく笑った
たった一週間しか会わなかっただけなのに…
「麻衣ちゃん」
「っ!え、えっ!なに?」
「今日、仕事の後予定は?」
「あっ…えっと…」
カイトには沢山聞きたいことがあった。
大阪のこと、莉奈さんのこと。
だけど……
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