金色・銀色王子さま


「……っバカにすんな!私は遊ばれるほど軽い女じゃねぇんだよ!!」

仁王立ちで彼に罵声を浴びせるとカバンを握りしめ席を立った。
これ以上、ここに居たくない。
慌ててひき止める店長に飲み会代を渡し、タクシーに乗り込んだ。


遠くなる景色を背に、窓の外を見た。
ネオン街が眩しく感じる。知らない間に伝う涙を袖で拭った。
話好きそうな運転手さんも、そんな姿に気を遣ってか行く先を聞くだけで黙っていてくれた。





"遊ばれてるのに気付かない"


その言葉が、5年前浮気した彼氏を思い出すようで悔しかった。
分かってた、本当に気付けなかった自分がバカだったのは。それでも少なくともあのとき私は本気で恋してた。




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