金色・銀色王子さま
「………これ」

そう言って彼の腕に抱き抱えられていたのは茶色い猫。目が合うとクリッとした目を光らせか弱くニャーとひと鳴き。


「……ね、猫?」

「なんだ…猫かよ」
彼に抱き抱えられた犯人を見て、鼻を啜りながら徐々に鼓動が落ち着き始めた。
途端に腰が抜けたようにその場に崩れる。


「なんだぁー…猫だったんだぁ…」

「こいつノラだろ?なんでこんなとこに」

「多分…昼間掃除してたときに玄関…開けてたからかな…」
年甲斐もなく叫んで泣いて、しかも寝てて猫が部屋に入ってたことに気付かなかったなんて顔から火が出そうだ。
それでもホッとしたからか涙は溢れてくる。


「まさか不審者と勘違いしたのが猫だとはね」

「ご、ごめんなさい…」

片桐龍之介は呆れた顔をしながら、猫を外へ出すと散らばったゴミを拾い始めてくれた。

「い、いいよ!汚いから…」

慌てて自分も拾おうと手を伸ばしたところで至近距離バチッと目が合った。



「なに?」

「え、あ、うん、何でもない…」


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