金色・銀色王子さま
仕事中だからか、色んな表情が見られる。
少しだけ口角が上がる微笑みだったり、お客さんの絡みに困惑した顔だったり、メニュー説明する真剣な顔だったり。

「はっ…私なに目で追いかけてるんだろっ…」

ただ単にみる景色が無かっただけ。
自然と飲むペースが早くなってくにつれて、いつもの眠気が襲う。
酔いが回るの早いのは疲れてるからかな…。




………………



………………………





……………





「…………ぃ」
ゆらゆら、頭が揺れる。
頭だけじゃない、体もだ。
うー…気持ち悪くなるから揺らさないでよ…


「おい!起きろ!」

「!!!!」


朦朧とする意識で目を開けると、目の前に片桐の顔。はっと顔を上げて口を拭った。

「よだれ垂らすくらい爆睡してたのかよ」

「……あ、あれ?皆さんは…?」
霞んだ目を擦るとさっきまで賑やかだった店内には人はおらず、片桐と他の店員さんが片付けをしてるようだった。


「もう閉店なんですけど、お客さん」

「あっ、ごめん…今、出ます!出ます…」
そう言ってイスから降り、カバンから財布を取り出す。酔いの回った思考回路とバランス感覚は正常じゃなくよろけた体を片桐は支えてくれた。

.



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