金色・銀色王子さま
無言のまま、普通に歩けば15分の道を30分かけてやっとマンションまで来た。
エレベータで2階、ようやく到着…な気分だ。
片桐はため息をついて抱えるようにしてきた麻衣を見た。
観念したのか、泣いたから再び眠気が襲ってきたのか大人しい。


「…大丈夫か?」

「………うん」

お互い扉の前に立つ。チャランと、ポッケから出した鍵の音がしんとした空気に響く。

「あの、」

「………?」
片桐はふと、口を開いた麻衣を見た。


「お金…払う…」

「あぁ、いいよ別に。大して飲んでないし」


嘘だ。5、6杯は飲んでる。
いくら酔うのが早いとはいえ、そうゆうことの記憶を無くすことはない。
ドアに鍵をかけた片桐の手を止めて、麻衣は強引にお金を握らせた。


「こうゆうことはっ…きちんとしないといけませんっ…おとぉなりなんだから」

「……………」

「送っていただき、どうも…ありがとうございましたっ…」


荒れ放題のカバンの中に手を突っ込んで、ストーンデコでキラキラにカスタマイズした鍵を取り出す。こうゆうとき、分かりやすくして良かったと思う。



「おやすみな…」


そう言いかけたとき、勢いよく腕を掴まれた。


.
< 39 / 143 >

この作品をシェア

pagetop