金色・銀色王子さま
歩くこと10分。
階段を上がり、両手に持った紙袋のじわじわくる重さに疲れを感じたころ、私の幸せの住み処へと繋がるドアの前に到着。
独り身女子、2階で良かったと心から思う。
2階3部屋あり、202号室が住み処だ。


荷物をおろし、さっきから鳴り続ける携帯にやっと出た。心配性な母からだった。
爪のお仕事は頑張ってるの?と毎回聞いてくるけど、いい加減【ネイリスト】という単語を覚えてほしいものだ。
はいはい、と適度に対応したあと鍵をさしてドアを開ける。


「やることいっぱいあるんだから電話なんかしてらんないってーの…」

ブツブツ呟きながら、まだテレビとソファしかない部屋に荷物を置くとやることの1つ目に取り掛かり始めた。
用意していた菓子折りを片手にまずは奥の203号室のインターフォンを鳴らした。



初めてだから緊張する。
パーカーにジーパンでいいのかと考えてしまうけど、これからお隣さんで仲良くなるんだ。
ラフに行こう、ラフに。
何度か深呼吸してるうちにやっとドアが開いた。
開いた向こうから上半身裸の男の人。

「………!!!」
ギョッと目を見開いたのち、男の人も目を丸くした。

「はい?」
見知らぬ女子を下から上まで見ると、続いてどちら様?と続けて話した。
少しだけはにかみながら。


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