金色・銀色王子さま
嘘だ!なんて言えないくらい、片桐の視線がしっかり私だけを捉えてる。
手を振りほどきたい。それなのに、腕に伝わる力がそれをさせてはくれない。


暗闇に同化してしまうんじゃないかってくらい、誰も私たちには気付かず目の前の水槽へまっしぐら。



「ど、どうゆう意味が分かんないよっ…な、何言ってんのほんと…」


「冗談でなんかこんなこと言わねぇよ。あいつのこと好きにならない方がいい。あいつは…」


そう言って言葉を詰まらせるから、逸らした視線を向けた。
片桐は、躊躇いがちに眉間にシワを寄せた。


「あいつは…」




その先を知りたいのに、ふいに片桐の手が私の手から離れるとそれ以上何も言わなかった。
そして私たちを探してキョロキョロしていた香織と目が合うと頬を膨らませて駆け寄ってきた。


「もう、どこいたの?探したんだけどっ」

「いたいたー!二人して迷子になったんかと思ったわ!」

「しっかり大人だっつーの」


片桐は呆れて笑うカイトの肩を突いた。



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