金色・銀色王子さま
「あ、あの私…隣に越してきた藤井です。よろしくお願いします」

「あ、隣に?まじ?へぇ~そうなんだ」
目に当たる黒い前髪が邪魔になったのか、乱雑に髪をかきあげるとその目がはっきり見えた。


グレーで透き通るような瞳としっかり目が合った瞬間、どくんと心臓が跳ね上がった。


「不破です、不破カイト。でー…名前は?」

「え?」

「下の名前。藤井は呼びにくいから面倒だよ」

「ま、麻衣です…」


……下の名前で呼ぶ気なのか?


「麻衣ちゃんね。よろしく、麻衣ちゃん」
少しだけ笑って小首を傾げた姿は何とも言えない色気を漂わせた。
歳は同じくらいか下?
八重歯が少しだけ子供っぽさを感じさせたけど、イキナリ名前で呼ぶなんて…危険な雰囲気も感じる。


長居は禁物。手元の菓子折りを手渡しさっさと行こうとしたときだった。

「まだぁ~カイト~」
奥から女の子の声がして、後ろから不破カイトの腰に手を回す。
ちらっと脇から見るとギャルっぽい女の子がTシャツにパンツ姿でじっとこっちを見ている。
警戒してるというか、睨んでるようにも見える。
裸の男に、甘ったるい声で呼ぶ女。



「すいませんお邪魔して。失礼します」

一礼して顔を上げたときだった。

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