金色・銀色王子さま

「え?」


「麻衣、明日デートなんだって~」
香織は赤らめた頬に手を当てて羨ましいと言わんばかりに麻衣を見た。

「ちょ、香織!い、言わないで…」

「え~いいじゃん!龍之介くんにも言っといた方が良くない?相手はカイト君なんだし?」

何も知らない香織はひたすら饒舌だ。大好きなカクテルに口をつけて、片桐を見つめる。



「麻衣、羨ましいなぁ~あんな素敵な彼氏が出来て」

「彼氏じゃないよ!何言ってんのもう!」
香織と向かいに座らなきゃよかった。
慌てて口を塞ごうとするけど、手が届かないし笑いながら避けられる。

「だってこないだの水族館もいい感じだったじゃん?ねぇー龍之介くん」

「……さぁ」


そっけない返事を返す片桐。表情を見ても彼のポーカーフェイスからは心理が分かる訳ない。
香織はふふっと笑うと、おもむろに携帯を出した。


「あっそうだ。龍之介くん、番号教えてよ。こないだ聞きそびれちゃったし、またこうやって遊びに行きたいし」


首を傾げて微笑む香織を片桐は見下ろした。
差し出した携帯、積極的な香織。目を潤ませて上目遣いは酔ってるせい…?
すると片桐はそっと差し出された携帯を香織の手元に向ける。




「すいません。俺、好きな人にしか教えないんで」


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