金色・銀色王子さま
【8th room】赤い傘
雨はあれからずっと降っていた。
次の日も、しとしと降り続けていた。
ずっと止まなくて、それまでの過ごした時間が流れていくようで。
…あれだけカイトといたのに、楽しかった瞬間の記憶がどんどん掠れていく。
なのに、“莉奈”という女性と
カイトの表情。
冷たく見えたけど、部屋に入るときカイトはそっと彼女の背中に手を添えた。
それがあまりにも自然で、何も言えなかった。
「…あ、もしもし。お疲れさまです…藤井です」
布団に潜り込んだまま、携帯を耳元に置くとキンキンと元気な声が届く。
「店長すいません…風邪、引いちゃって。まだ予約入ってないですか?」
幸いまだ指名の予約は入ってなかった。
麻衣がズルズルと鼻をすする音と苦しそうな声に、店長は心配すると何とか予約を調整して休みをもらうことが出来た。
タイムリーに親から【寒くなってきたけど、風邪引いたりしてない?】なんてメールが来たけど。
朦朧とする意識の中、【ダイジョウブじゃない】とだけ返信して寝てしまった。
夢うつつの中、聞こえる覚えのある着信音。
おまけにバイブがうるさい。一度消してみたけど、そのあともひつこく鳴る。
ダイジョウブじゃない、なんて返したから心配してんのかな。めんどくさい。
もそもそ布団から顔を出すと、そのまま通話を押した。
「大丈夫だよ、ちょっと風邪ひいただけだから…」
無言で何も返ってこない。
「もしもし?お母さん?」
『………いや、俺だけど』
.
次の日も、しとしと降り続けていた。
ずっと止まなくて、それまでの過ごした時間が流れていくようで。
…あれだけカイトといたのに、楽しかった瞬間の記憶がどんどん掠れていく。
なのに、“莉奈”という女性と
カイトの表情。
冷たく見えたけど、部屋に入るときカイトはそっと彼女の背中に手を添えた。
それがあまりにも自然で、何も言えなかった。
「…あ、もしもし。お疲れさまです…藤井です」
布団に潜り込んだまま、携帯を耳元に置くとキンキンと元気な声が届く。
「店長すいません…風邪、引いちゃって。まだ予約入ってないですか?」
幸いまだ指名の予約は入ってなかった。
麻衣がズルズルと鼻をすする音と苦しそうな声に、店長は心配すると何とか予約を調整して休みをもらうことが出来た。
タイムリーに親から【寒くなってきたけど、風邪引いたりしてない?】なんてメールが来たけど。
朦朧とする意識の中、【ダイジョウブじゃない】とだけ返信して寝てしまった。
夢うつつの中、聞こえる覚えのある着信音。
おまけにバイブがうるさい。一度消してみたけど、そのあともひつこく鳴る。
ダイジョウブじゃない、なんて返したから心配してんのかな。めんどくさい。
もそもそ布団から顔を出すと、そのまま通話を押した。
「大丈夫だよ、ちょっと風邪ひいただけだから…」
無言で何も返ってこない。
「もしもし?お母さん?」
『………いや、俺だけど』
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