金色・銀色王子さま
「お、俺…?」
携帯から耳を放してディスプレイを見て目を疑った。
【片桐 龍之介】の表示。
あ、間違えちゃった…
「…あ、えっと…ごめん、片桐。間違えて掛けちゃった…じゃあね…」
すぐに切ろうとしたら、片桐が『ちょっと待った!』と声を張り上げた。
『…風邪引いたの?』
「あー…うん。でも、大丈夫…」
全然、説得力ない声に片桐はすぐ言い返す。
『大丈夫じゃねぇだろ。家にいんの?』
病弱なときは低い声がとても優しく、心地よく感じる。掠れ気味に“うん”と返すとガサゴソ音を立てながら片桐は“分かった”とだけ言って電話を切った。
それからさほど時間が経ってないと思う。
インターフォンが鳴る音が聞こえて、まさかと思いながらもダラダラとパジャマのまま玄関に行った。
覗き穴から見えた姿に、なぜか安心感が湧いてくる。
カチャ…と、ゆっくりドアを20センチくらい開けた。
「片桐…どうしたの?」
目の前の片桐は息を切らしていた。
ある程度、呼吸を整えてから片桐は答えた。
「どうしたじゃねぇよ。熱は?」
「多分あるけど…うん。でも、平気。もしかして…心配してくれたとか?」
「……………」
…そんなわけないか。
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