金色・銀色王子さま
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コトコト…キッチンから聞こえる音といい匂いが布団の中でまるまる麻衣の鼻を掠めていく。
自分の部屋のキッチンに片桐が立ってる不思議な光景をぼんやり見つめながら、昨日のことを思い出す。
『ごめんね、麻衣ちゃん』
そう、莉奈さんを部屋に入れてドアを閉めたカイト。
ひきつった笑顔を無理矢理作って、私を見てるようで彼の瞳に私は映ってなかった。
気付いてしまった。
ーーーー莉奈さんを見たあの表情(カオ)は、好きな人に向ける表情(カオ)だって。
「出来たぞ」
ハッとして起きあがると、テーブルには湯気を立てたお粥。たまご粥だ。
「わぁ…美味しそう。いただきます」
さっそく一口、フーフーと冷ましてから口に運んだ。
手慣れた感じで作ってただけあって、間違いなく美味しくて思わず笑顔がこぼれる。
「俺の得意料理」
「え?お粥が?」
「…親父によく作ってたんだ。具合悪かったときに。久しぶりに作ったけど、ブランク感じない美味しさだな」
片桐は普通に言うけど、“久しぶり”になったワケが聞かなくても分かって少しだけ切ない気分になる。
「…片桐ってさ、」
「……………」
「料理も出来るし、完璧だよね。…性格はちょっとだけど」
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