金色・銀色王子さま
片桐がムッとしたの分かったけど、麻衣は気にせずお粥を口に運ぶ。


「…ふふっ、美味しい、嬉しい」


「そりゃどうも。次はカイトに作ってもらいな」


カイトに…、そう言われて頷けなくて麻衣は今まで休みなく持っていたレンゲをテーブルに置いた。






「カイトのことはさ…友達だから。ただのお隣で、ただのお友達」

「ただのお隣さんが、デートに誘うかよ」

「………私がそう思ってなくても、そうなんだよ。カイトにはいっぱい女の子がいて、私はその一人なんだよ。カイトには…ちゃんと大切な人がいるの」


「……あんたの勘違いでしょ」


「勘違いじゃないよ。…赤い傘」


赤い傘…そう呟いた麻衣の言葉に何のことか一瞬分からなかった。
だけど、息を切らして麻衣の部屋に来たとき目に付いた、カイトの部屋の前に掛けてあった赤い傘。



「あれ、あんたのじゃなかったの…?」


「…………」


「はっ…あいつ、あんたと遊んでから他の女、部屋に連れ込んでんのかよ」


「仕方ないよ。だって私は…お隣さんだから」


言えば言うほど惨めで、悲しくなってくる。
同時に、そう嫌味でこぼれてしまう自分に苛立ちが募ってくる。
カイトは何も悪くない。


悪いのは、勝手に踏み込みそうになってる自分。


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