金色・銀色王子さま
【9th room】好きかもって思ったから
ー翌日ー
しっかり薬も飲んでたからか多少だるさはあるものの仕事に行くことが出来た。
店長やほかのスタッフはあんまり無理しないでね、と優しい言葉をかけてくれたのは普段欠勤が少ないからだろう。
世間は休みなのに、珍しく予約に空きが出来て一息つく。
「ふぅー………」
………あのあと、片桐は私の頭の上にポンと軽く手を置くと“ちゃんと休んどけよ”と、部屋を出ていった。
腰が抜けたみたい、放心の私はズルズルとしばらく廊下にしゃがみ込んだ。
片桐めっ…なんてことをしてくれたの…
なんか言ってやらないと…
と、思っても会うのが気まずい。
だってあんな…あんなキスされたら…頭の中はぐっちゃぐちゃだ。
「麻衣ちゃん」
自分を呼ぶ声にハッとした。うっかり、しっかり自分の世界に入ってしまっていて抱えた頭を上げた。
飛び込みのお客様でも来たのだろうか。
裏の部屋からお店に顔を出すと、きょろきょろ店内を見回す莉奈が立っていた。
「こんにちは」
目があった莉奈は頭を下げると麻衣も慌てて返した。
こないだ見たときと同じ、きちっとスーツを着こなしてる。
「こないだのこと謝りたくて…今、お時間大丈夫ですか?」
小声で話しかけてきた莉奈から、鼻を掠める香水の香り。
「あっ、は、はい!ちょうど休憩…だったので少しだけなら」
戸惑いながらも、店長に許可を得て二人は近くにあるカフェへと足を運んだ。
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