金色・銀色王子さま
「あの、」
「……………」
「カイトは、莉奈さんのこと他人だなんて思ってないと思います…きっと」
あの雨の日、莉奈を見つめるカイトの瞳は莉奈を嫌ってるようには見えなかった。
もっと違う、感情。
少しの無言から、莉奈の携帯が鳴った。
職場からの様で、東京にいる間のタイトなスケジュールを手帳から読み上げていく。
「お忙しいんですね、莉奈さん。でも、かっこいい」
「かっこいいなんて…まぁ、こうだからいい歳して結婚出来ないのよ。麻衣ちゃんは可愛いし、ネイリストって素敵なお仕事してるじゃない」
「そんなことないです。ほんとに」
「明後日また大阪に帰るんだ。その前に麻衣ちゃんとお話しできて良かった」
「え、今日はどこに…」
「ホテル予約したの。カイトもさすがにずっと一緒はうんざりしちゃうし。じゃあ、」
莉奈は足早にでも優しい笑顔でその場を去った。しばらくその後ろ姿にみとれて、さりげなくコーヒーの代金が机に多く置かれていたことを、帰る間際に気付いてしまった。
そしてその日の帰り道、麻衣はあるCDショップの前で立ち止まった。
駅から少し離れたところまでゆっくり歩いて。
「お疲れさま、カイト」
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