金色・銀色王子さま
「え?なに?自分のため?」

新幹線から降りてきた人の流れに飲まれそうになって、慌てて先を行く龍之介の裾を掴んだ。


「ちょっと止まっ…」
つまづきそうになりながら、顔を上げるとそこには真っ直ぐ見つめる龍之介がいる。
瞬間、心臓がドクンと大きく脈打った。




「だってもう、遠慮しないでいけるじゃん」


「っ…な、なんの遠慮っ…」

「ホラ行くぞ。どうせ暇だろ?」

「ひっ、暇とか言わないでくれるっ?!てかドコに行くの?!」



龍之介は裾を掴んだ麻衣の手をグッと握り締めた。
それはごく自然に、しばらくしてから麻衣も気付くほど。
強さだけじゃない、かじかむ手を包まれた穏やかな温かさを感じるのはこの寒い空気のせい?



一体、片桐はどこに連れて行こうとしてるの??












「え?映画館…?」
思いも寄らぬ場所に連れてこられて、麻衣は上映中の映画ポスターの前でポカンと口を開けていた。
サッとチケットを買ってきた龍之介は、「行くぞ」と言って手をひく。

「ちょ、ちょっと待って!こんなときに映画って」


いくら休みだからって、まだ昼間だからって…正直そんな気分じゃない。
カイトのことスッキリしたとはいえ、好きになりかけた人がほんとの気持ちに気付く瞬間を見届けたんだから。



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